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2020.12.25
裁判所の支部問題について      岡安知巳

横浜地方裁判所小田原支部は小田原城のすぐ近くにあります。

    ここでは横浜地方裁判所本庁で扱う事件のほとんど(裁判員裁判を含む。)を扱っていますが、        労働審判事件は扱っていません。

            日本弁護士会連合会(日弁連)は、裁判所の支部問題の一つとして             この労働審判事件を小田原支部でも扱ってほしいと声を上げています。

労働審判制度というのは,個々の労働者と事業主との間に生じた労働関係に関する紛争を,裁判所において,原則として3回以内の期日で,迅速,適正かつ実効的に解決することを目的として設けられた制度です。
手続はまず調停の形で進み、調停がまとまらない場合には審判がされます。
調停とは,裁判のように勝ち負けを決めるのではなく,話合いによりお互いが合意することで紛争の解決を図る手続です。裁判官である労働審判官1名と,労働関係に関する専門的な知識経験を有する労働審判員2名(使用者側、労働者側各1名)が当事者双方の話をよく聞き,解決に向けて調整をしてくれます。

労働審判のうち約7割は、この調停で迅速に解決できているようです。

        労働審判制度は,平成18年4月に,都道府県庁所在地にある裁判所(本庁)と、         全国で200以上ある支部のうち二つの支部(東京地裁立川支部、福岡地裁小倉支部) でスタートしました。

その後,労働審判制度の有用性が強く認識されるようになり,日弁連は,多くの支部で実施できるようにしようという方針を決めました。

平成26年9月には、日弁連と最高裁との間で労働審判の支部拡大の協議をすることが決まり、分析と協議を続けた結果、平成28年1月に静岡地裁浜松支部,長野地裁松本支部,広島地裁福山支部の3支部で開始することになりました(平成29年4月実施)。

実は,小田原支部も当初は候補地になっていたのですが,同支部管内の事件数,労働審判員の確保の難しさ、本庁までの移動時間が比較的短いことなどから早い段階で落選したようです。

労働審判実現に至った長野地裁松本支部では,パンプレットの作成,企業団体・労働者団体に県議会・最高裁に対する要望書への署名依頼,県議会や47の市町村議会での意見書採択,弊害事例の収集,日弁連キャラバンや支部サミットの開催など様々な取組をしていました。

弁護士の日常の業務をこなしながら、これだけの取組をするのは並大抵のことではありません。

これらの取組のうち日弁連キャラバンというのは,各地の弁護士会の取組や経験等を共有するための交流会です。

令和2年10月30日には,静岡県弁護士会沼津支部において,労働審判の支部拡大をテーマに日弁連キャラバンが開催され,私も参加してきました。

新型コロナウィルス感染症対策の観点から,定員約200名の会議室でしたが,現地参加者40名に絞り,ウェブ会議を併用して開催されました。

会の最後には、労働審判の支部拡大について運動を継続していくとの宣言が採択されました。

平成25年の神奈川県弁護士会県西支部総会では、横浜地裁小田原支部での労働審判実施を求める決議をしています。今後、改めて活動することになるかもしれません。

なお、神奈川県弁護士会では、来年度、支部サミットの開催を予定していますが、そのテーマは、裁判所の支部問題のうち家庭裁判所の充実です。

具体的には、家事事件を扱っていない裁判所(藤沢簡裁などの独立簡裁)にも家庭裁判所の出張所を設けて、家事調停や後見人の選任監督ができるようにしようというものです。
詳しくは次回に譲ります。
            以上


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